HOME  >> 肛門周辺の疾病  >> 過敏性腸症候群とは?症状の特徴・治療方法について解説|港北肛門クリニック

過敏性腸症候群とは?症状の特徴・治療方法について解説|港北肛門クリニック

過敏性腸症候群

繰り返す腹痛と便通の異常で、大腸には器質的な変化のない機能性の下部消化管障害です。腹痛があり排便するとおさまるとか、軟便~下痢あるいは硬便~兎糞状の便を繰り返すとか、腹部膨満(感)や残便感などの症状があります。今までRomeⅢ診断基準が用いられてきましたが、2016年からRomeⅣの診断基準が用いられています。

■RomeⅣ診断基準

腹痛が最近の3ヵ月のなかで1週間につき少なくとも1日以上を占め、下記の2項目以上の特徴を示す。

  • (1)排便に関連する
  • (2)排便頻度の変化に関連する
  • (3)便形状(外観)の変化に関連する

※少なくとも診断の6ヵ月以上前に症状が出現し、最近3ヵ月は基準を満たす。

RomeⅣの型分類

  • 1.便秘型:硬便または兎糞状便(a)が便形状の25%より多く、かつ、軟便または水様便(b)が便形状の25%未満(c)
  • 2.下痢型:軟便または水様便(b)が便形状の25%より多く、かつ、硬便または兎糞状便(a)が便形状の25%未満(c)
  • 3.混合型:硬便または兎糞状便(a)が便形状の25%より多く,かつ、軟便または水様便(b)が便形状の25%より多い(c)
  • 4.分類不能型:便性状の異常が不十分であって、上記のいずれでもない
  • (a)ブリストル便形状スケール、タイプ1~2(硬くてコロコロした木の実状の通過困難な硬便、あるいはソーセージ状の硬便)。
  • (b)ブリストル便形状スケール、タイプ6~7(境界がほぐれたふにゃふにゃの不定形の小片便,泥状便,または固形物を含まない水様便)。
  • (c)止痢薬や緩下薬を用いてないときの糞便で評価すること。

【参考】 RomeⅢ診断基準

過去3ヵ月間、月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感※※が繰り返し起こり、次の項目の2つ以上がある。

  • (1)排便によって症状が軽減する
  • (2)発症時に排便頻度の変化がある
  • (3)発症時に便形状(外観)の変化がある

※6ヵ月以上前から症状があり、最近3ヵ月間は上記の基準を満たしていること
※※腹部不快感は、痛みとは表現されない不快な感覚を意味する。病態生理学的研究や臨床研究に際しては、週に2日以上の痛みあるいは不快症状があるものを適格症例とする。

治療について

薬による治療や食事療法や生活指導を行います。
症状によって、異なりますが、薬は整腸剤、腸の緊張や痛みをとる鎮痙剤、止痢剤、安定剤、漢方薬などを用います。合うかどうか個人差があるため、使用してみて、効果を確かめていきます。
薬だけに頼るのではなく、基本的には腸を刺激しないようにするのが大切ですから、食事の内容や量、食べ方には注意が必要です。食物繊維(特に不溶性)の少ない食品を摂取し、水分・油分・乳製品・アルコールなどを減らし、食べすぎには注意です。しっかり噛んで、ゆっくり食べることも大切で、食事を一気にかきこむなどは避けなければなりません。
ストレスや疲れなどで悪化しますので、気分転換や休養をとり、適度に運動することも重要です。また、冷房などで冷やすのもよくないので、腹部だけでなく身体の冷えには注意し、1日1回、就寝前には入浴して体を暖め、リラックスする時間を持つことも必要です。
ポリカルボフィルカルシウムという、便に混じり水分を保持する薬剤が開発されましたが、効果はまちまちです。
男性下痢型に対して、5-HT3受容体拮抗薬(イリボー)も発売され、朝などに便意が頻回で、通勤途上に便意を催すことがあるような男性には、効果がみられています。
コロコロ便が多く排出される、便秘型(痙攣性便秘)に対しては、整腸剤だけでなく極軽い下剤を使っていく事があります。
便秘と下痢が繰り返す混合型に対しては、下痢と便秘のどちらに重きをおくかで、治療の仕方が違ってきます。ひどく便秘したり下痢したりしないこと、つまり大きく調子を崩さない事が大切です。整腸剤や軽い下剤を合わせて、痛みが強い場合は鎮痙剤も用い、効果を確認しながら治療していきます。
過敏性腸症候群は、体質的なところもあるため、上手に付き合っていく事が大切です。疲れやストレス、食事の内容などにより、症状が悪化することを理解していただき、自分にあった薬を飲み、自分に合わない食事はなるべく摂らないなど自ら体調管理をしていくことも重要です。