大腸の疾患は大きく、2つに分けられます。
1
器質的疾患
大腸がん・ポリープ、大腸炎、憩室症など
1】大腸がん・大腸ポリープ
2】炎症性腸疾患
3】虚血性大腸炎
4】感染性大腸炎(細菌性や大腸アメーバなど)
5】薬剤性大腸炎
6】大腸憩室症

2
機能的疾患
過敏性腸症候群、便秘症、下痢症など
1】過敏性腸症候群
2】便秘症


1器質的疾患
1】大腸がん・大腸ポリープ

大腸がんは、現在増加傾向にあり、死亡統計でみても、男性では肺、胃、肝に次いで4位、女性では胃に次いで2位に位置にしています。食生活の欧米化に伴って、増加してきたと言われています。大腸がんではその発生において、大腸ポリープとの関連が認められております。大腸ポリープも、大腸がんに対する意識の高まりや便潜血検査、大腸検査の普及もあり、発見率も増えてきました。大腸ポリープは、良性・悪性のどちらに対しても用いられる言葉ですが、一般的に狭い意味では良性のものをさしており、悪性と分かった時点で、“がん”と表現されます。良性の中でも、そのまま放置しても問題のない過形成ポリープといわれるものから、腺腫といわれる前がん状態まであります。腺腫は5mm以上になるとがんの併存する危険性が増してきます。また、様々な形があり、平らなものから、きのこのように茎を持ったものまであります。成長する速さは、個々まちまちですが、平らなものほど悪性化しやすく、成長の速度も早いと考えられています。がんは早期がんと進行がんに分けられますが、これは、どれくらい深くまで根を生やしているか(浸潤しているか)によります。一口に早期と言っても段階があり、粘膜にとどまった極早期のものは良性のものと同じように治療できる場合がほとんどですが、早期でも進行がんと同じように治療しなければならない場合もあります。ケース・バイ・ケースで術式は決定されます。

治療
5mm以上のポリープは、切除が必要です。良性のポリープならば、内視鏡的に切除できます。しかし、一部にがん化していても、粘膜内にとどまっていれば、同様に内視鏡で切除可能です。非常に幅の広いタイプのものやがんが粘膜から深く根を生やす(浸潤した)ものでは、大きくまた深くとる必要があるため、がんやポリープの組織を残したり、腸の壁に穴が開いたり(穿孔)することがあるため、内視鏡的な粘膜の切除より、腸の切除をした方がより確実にそして安全に行えます。腸の切除が必要なポリープおよびがんに対しては、さまざまなデータを下に、その悪性度や広がりを判断し、手術がなされます。


2】炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎とクローン病があります。
それぞれ原因は不明で、難病に指定されています。20才前後の若年期に発症し易い特徴があります。

潰瘍性大腸炎
直腸から連続性に奥に広がり、主に大腸の粘膜が侵される疾患です。その炎症の起きる範囲から1)直腸炎型、2)左結腸炎型、3)全大腸炎型に分けられます。粘血便、下痢、腹痛を主症状とし、重症になれば発熱や脱水症状なども出てきます。

治療
薬剤(サラゾピリンやペンタサ、ステロイドホルモン)の内服、坐薬、浣腸と食事療法などを行います。効果のない場合は、免疫抑制剤や白血球除去療法などを行うこともあります。重症例や劇症タイプでは、手術により大腸の摘出手術を行います。

クローン病
大腸や小腸の壁に深い特徴的な深い潰瘍を作り、周囲の臓器と瘻孔を形成したり、瘢痕性に腸が細くなり通過障害を起こしたりします。腹痛、下痢が非常にひどく、まれに出血も認めます。高率に肛門疾患が合併し、非常に複雑な痔瘻となったり、難治性の肛門潰瘍を形成したりします。

治療
食事栄養の制限(成分栄養などの摂取)と薬剤(サラゾピリンやペンタサ、ステロイドホルモン)の内服を行います。外科的には肛門の周囲に膿瘍ができて切開したり、通過障害のある場所を広げたりします。


3】虚血性大腸炎
突然に腹痛、下痢、下血で発症します。一時的に腸に血液がいかなくなり、粘膜が壊死あるいはそれに近い状態に陥ることで起こります。明らかな原因は不明ですが、いままでは、高齢で動脈硬化を起こすような疾患(糖尿病、高脂血症、高血圧など)を持っている方に、便秘から下痢になるなど、腸の内圧が大きく変化したときに発生すると考えられてきました。しかし大腸内視鏡検査の普及で、20代の若年者や糖尿病などの疾患のない方に発症することも珍しくないため、原因も動脈硬化による血管の狭窄によるのではなく、腸内の圧の急激な変化によって引き起こされる血流障害が主と考えられるようになってきました。炎症は、ほとんどS状結腸から下行結腸に認め、発赤を認める軽い程度のものから、潰瘍や粘膜下層の出血・浮腫を広い範囲で認める重いものまで様々です。ほとんどは、そのままで治癒しますが(一過性型)、稀になかなか治癒せず、その部分が狭くなる(狭窄型)のものもあります。

治療
まずは、腸の安静を計ります。程度にもよりますが、絶食と点滴により、ほとんどの場合完全に治癒します(一過性型)。治癒が遷延した場合、狭くなり通過障害が出た場合は、外科的に切除しなければならないこともあります。


4】感染性大腸炎(細菌性や大腸アメーバなど)
病原菌(病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ、赤痢菌、サルモネラ、コレラ、赤痢アメーバなど)により発症した大腸炎です。食中毒の場合もこれに含まれます。腹痛、下痢、嘔吐、発熱、下血などの症状があります。

治療
まずは、絶食など食事を制限し、腸管の安静に努めます。激しい下痢のため脱水状態になりやすいので、十分に点滴を行います。原因菌に効果的な抗生物質の投与については、状態を悪化させることもあるために、賛否両論があります。


5】薬剤性大腸炎
抗生物質などの薬剤で発症する大腸炎です。腹痛、下痢、下血などの症状が出ます。
内服を始めて、3〜4日目での発症が多いです。

治療
原因になっている抗生物質を中止し、絶食や食事制限により点滴などの治療を行うことで完治します。


6】大腸憩室症
大腸にできる凹みをいいます。日本人は盲腸や上行結腸に多く、欧米人はS状結腸に多いと言われてきました。しかし、最近は日本人もS状結腸の憩室が増えてきました。
特に治療をするわけではありませんが、出血の原因になったり、炎症を起こし(憩室炎)、腹痛の原因になったりもします。

治療
憩室炎や出血のない時は特に治療を行いません。憩室炎と診断がつけば、絶食・抗生物質投与の保存的治療でほぼ改善します。出血は保存的に抑えられることが多いのですが、止まらなければクリップで止血したり、出血部を切除したりすることもあります。


2]機能的疾患
1】過敏性腸症候群
排便前に腹痛があり排便するとおさまる、軟便〜下痢あるいは硬便〜兎糞状、排便回数が一日4回以上あるいは週2回以下、腹部膨満(感)、残便感などの症状があります。
1)下痢型 下痢が中心で、便の回数の多いもの。
2)
便秘型(痙攣性便秘)コロコロ便で、腹部膨満(感)はあるが、なかなかでないもの。
3)交替型 下痢と便秘を繰り返すもの。

治療
薬による治療や食事療法を行います。薬は整腸剤、腸の緊張や痛みをとる鎮痙剤、安定剤などを用います。基本的には腸を刺激しないようにするのが大切です。さらに、ストレスや疲れなどで悪化しますので、気分転換や休養をとることも重要です。
下痢型に対しては、食物繊維の少ない食品を摂取し、水分・油分・食事量・乳製品・アルコールの制限などを行います。食物繊維の中でも水溶性の繊維(たとえばりんごなど)は、むしろ摂取したほうがいいです。薬は、整腸剤、止痢剤、鎮痙剤を用います。
便秘型と交替型の治療がやや困難であり、個人差があります。基本は腹部膨満・腹痛や下痢を起こさないように、適度に食物繊維を摂取し、水分・油分・食事量・乳製品も適度に摂取します。摂り過ぎは腸を刺激し、逆効果ですから、注意しなければなりません。整腸剤や場合によっては極軽い下剤を使う必要もあります。最近、ポリカルボフィルカルシウムという、便に混じり水分を保持する薬剤が開発されましたが、効果はまちまちです。とにかく、腸にあまり大きな変化をさせないようにし、自分にあった食品や薬を用いるようにするのが一番です。


2】便秘症
はっきりとした定義はありませんが、一般的には3日以上排便がない場合を便秘とします。しかし、毎日排便があっても、食べてから便として出るまでに日数のかかる場合は“かくれた便秘”と言うことができます。
便秘には次の3つがあります。
1)弛緩性便秘(腸が動かないために起こる)
2)
痙攣性便秘(腸の緊張が強いために起きる)
3)直腸性便秘
(便が直腸まで来ているのに出ない)

治療
食事と薬、排便習慣をつける訓練により治療します。
1)弛緩性便秘では、食物繊維を中心に、食事を多めにとることを心がけ、積極的に水分、油、コーヒー、アルコール、乳製品などを摂取するようにします。特に頑固な方は、朝起き抜けに冷水や冷たい牛乳などを飲まれ刺激するのも一方です。本などをトイレに持ち込み長く座り、息まずに、出るのを待ち、習慣づけるのも一方です。
2)痙攣性便秘は上記の過敏性腸症候群の便秘型に当たります。
3)直腸性便秘は、排便を我慢したり、肛門が狭いあるいは痛いなどで出しにくかったりして、直腸に便がたまって出ない状態です。便は肛門近くまで来ているわけですから、それを取り除く必要がありますが、肛門に原因があるならそれを治療します。また、食物繊維や下剤を使い、腸を刺激し腸蠕動を亢進させておく必要があります。頻回に浣腸するのは習慣性になり、直腸性の便秘を悪化させてしまう可能性がありお勧めできません。